雪組公演「ひかりふる路」感想
望海風斗と真彩希帆の大劇場お披露目公演なわけですが、 とりあえず私のスタンスから述べておきますと…、
ありがとう生田くん。
生田くんは天才。
望海風斗と真彩希帆、2人の資質を最大限生かしつつ、作品としてのクオリティも高い!っていうのは宝塚を観てきた9年間の中でも本当貴重な体験をさせてもらいましたって感じで。とにかく「すばらしいお披露目公演をありがとう!」って思います。
主人公がロベス・ピエール
まず、主人公がロベス・ピエールの公演やりますと聞いた時点で「これどうするんだ?」って思いよね。 こちとらヅカオタ、ミュージカルオタを相手に、ただただかっこいい政治家ロベス・ピエールを描くのは無理があると思うんですよ。 我々にとってフランス革命は必修科目みたいなところありますからね。「どの側面からロベス・ピエールを描くんだ?」ぐらいの期待はしてるわけで。
結果、「ひかりふる路」がどういう作品だったかというと、革命に狂っていくロベスピエールを周囲の人物たちがなんとか"此方"へ引き戻そうとする話、になっていました。 つまり、ダントン(二番手・彩風咲奈)やマリー・アンヌ(トップ娘役・真彩希帆)たちが、ロベス・ピエール(トップスター・望海風斗)を愛するあまり命がけで救い出そうとする話なんですよ。 現在の雪組にぴったりな図式だなと。
姫系トップ・望海風斗
方々で「望海さんは姫系トップ」と言われるようになりましたが、私はこの説(?)をとても推しています。
以前、福田里香先生がラジオ番組「タマフル(略称)」で語ったチーム男子論の中に「チーム男子の中核には姫系の人が居るとよい」といった発言がありました。
ここでいう"姫系"とは、本人の魅力のために勝手に人が集まってきちゃうような人、こちらから手を差し伸べたくなってしまうような人。「俺についてこい!」とぐいぐい引っ張るリーダータイプではない。福田先生は、『七人の侍』の勘兵衛を例に挙げられています。
そんな姫系トップ望海風斗のお披露目にこのロベスピエール像を当ててくるあたり、生田くんほんと望海さんのこと好きだよね…、わかるわかるよその気持ち…。
各キャラクター評
そこに、真彩希帆をナイフ持ったヒロインとして配置するのも最高。
なんといっても「葛藤と焦燥」でしたっけ?要は「愛する人を殺すなんてできないわああああ」ソングです。あれはね。こんなこと言ったらいけないかもしれないですが「新妻聖子級の人材が宝塚に現れた!」と思ってしまいました。
ただね!私は言いたい。ここ真彩希帆ちゃんオペラロックしちゃうところですが…
後ろで彩凪翔さんがすごくイイ芝居しています!
彩凪翔さん演じるロラン夫人は、毅然とした態度で処刑に臨んだひとりと言われています。このシーン、他の処刑者は怯えた表情で無理やり断頭台へ押しやられ行くのですが、彩凪ロラン夫人は警備兵をにらみつけ、自ら断頭台へ歩みを進めます。ここ最高だし、男役・彩凪翔がキャスティングされた甲斐があったなぁと思う芝居です。
にしても、ダントン文句なしにかっこよかったな〜〜。たぶん、この話で普通に主人公(=かっこいい英雄)を立てようと思ったらダントンが主人公だよね。つまり、まさに二番手が演るにふさわしい役。生田くんありがとう。
今回の公演、芝居もショーも彩風さんはオラオラさせられていてみんなの見たい彩風咲奈!をかんじました。
正直、望海ファンとしては「二番手咲ちゃんかよ…頭身的に横並びキツイじゃねぇか…」と思ってたんですが、今回のマクシムとジョルジュの身長差最高だよね!!!
やっぱり生田くんは天才(リフレイン)
変化する雪組
なににビックリしたって雪組子のコーラスがまじで綺麗になってた!
本当パワーアップしてて、こんなことは以前通ってた頃の9年前の雪組でももちろんなかったことで!そこの変化に、組子たちの歌うまトップコンビを盛り立てたい!という気持ちが感じられて、本当、ともすると泣いちゃうよね。
ハッピーエンド?バッドエンド?
私は「ひかりふる路」、ハッピーエンドだと思っております。
そもそも「お披露目公演なのにバッドエンドってどうなの?」とのツイートを見て、え!?「ひかりふる路」ってバッドエンドなんだ!?と驚いたクチです。
まぁ、たしかにラストでロベス・ピエールとマリー・アンヌの二人は死別するわけだから、ハッピーかバッドかと問われればバッドかもしれない。
二人は結婚し、子供を生み育て、生涯を共にすることはなかったのだから。
でも、ロベス・ピエールの人生として、あれだけの粛清をして、不幸にも正気に戻ってしまい、それでも最期には許す心、愛する心を取り戻せた。愛する人と愛情を確認して最期を迎えることができた、ってめっちゃ幸せで救いのある話だと思うんですよ。
ロベス・ピエールに残された最後の救いはマリー・アンヌへの許しと愛だけだと思うんです。
だから私、「あの女を逃してしまいました」「それで、その女は今どこにいる!?」とラスト牢獄のシーンはいつも平常心で見ていられないんです。
あそこでロベス・ピエールが「てめぇこの野郎!」とばかりにマリー・アンヌを罵れば、かなり白けるんですけど。(それこそ「もう、どうしようもないわ…」cv真彩希帆)
ロベス・ピエールはここで「教えてくれ…君と僕との間に真実と呼べるものがあったのか?」と問いかけるわけです。
マリー・アンヌの愛を得られたことも一つの大きな救いです。でも、それ以上に自分以上に思いやり愛せる他者を得られたことが大きな幸せだと思うのです。
ほら、やっぱりハッピーなエンドじゃないですか?